スプリットンブロックを使用した河川災害復旧のポイントについて、美しい山河を守る災害復旧基本方針(平成26年6月)を基本にまとめました。
国土交通省:美しい山河を守る災害復旧基本方針(平成26年6月)
http://www.mlit.go.jp/river/shishin_guideline/bousai/saigai/measures-saigai/index.html
- 護岸を分節して法面を小さく見せる
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法長が長い場合や壁高が高い場合の存在感を緩和するために護岸を分節する。
解 説
・護岸を1枚の法面と設計する護岸高が高く存在感が大きくなるため、護岸を分節し、面積を小分けにすることで護岸法面の存在感を緩和することができる。
▲上下の護岸ブロック(1割勾配)
▲上下の護岸ブロック(5分勾配)
- 法面の明度・彩度を抑える
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護岸が露出する場合には、法面の明度は6以下を目安とする。
解 説
・滑面のコンクリートブロックの明度は9~10と高く、周辺景観との明度差が生じ非常に目立つ存在となる。
・自然石の明度は、3~6の範囲にあることから、コンクリートブロックについても、明度は6以下を目安とするとよい。
▲周辺との明度差が大きい護岸(間知ブロック 明度9~10)
▲周辺との明度差が小さい護岸(アニーヴン 明度3.5)
- 素材は適切な大きさとする
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護岸が露出する場合、周辺の景観と調和する護岸の素材の大きさとする。
解 説
・対象までの距離が10mの場合、35cm以上の大きさのものは大き過ぎると感じられる。
- テクスチャーを持たせる
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護岸が露出する場合、護岸の素材に適度なテクスチャーを持たせる。
解 説
・コンクリート護岸ブロックの選定に当たっては、表面が適度に粗く、凹凸(陰影)があるものを選定する。
・護岸ブロックで主に用いられているテクスチャーは下側の8種類です。
▲景観実験護岸
▲アニーヴン→半割 ポーラスアニーヴン→ポーラス
- 忌避される景観パターンを避ける
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護岸に使われるブロックの形やサイズ、積み方、目地などによる景観パターンが、周辺の景観やその場の特性と調和していること。
解 説
・谷積、布積など伝統的な積み方に見られる景観パターンだけでなく、千鳥配置、階段状、穴が目立つなど近年見られるようになった景観パターンがある。
- 水際部に植物の繁茂を促して、水際のラインを不明瞭にする
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水際部に植物の繁茂を促すことにより、水際のラインを不明瞭にする。
解 説
護岸のような人工な構造物があると、景観悪化の要因となる場合が多く、水際部に寄土、寄石を行って水際のラインを不明瞭にするとよい。
▲直線的な水際ライン
▲水際ラインを不明瞭にしている
- 天端・法肩のラインを不明瞭にする
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天端工は天端コンクリートが目立たないように工夫する。
解 説
・天端コンクリートを天端ブロック上面から少し低い位置に打ったり、天端コンクリートをなくしたりして、その上面を土で埋め戻した場合は、天端に草が生えてエッジが和らぐ効果がある。
▲天端コンクリートは、ブロック上部に10cm程度のコンクリートを打つタイプ(a)が多いが、硬い印象となりやすい。天端ブロック上面から少し低い位置に打つ(b)は、天端に草が生えてエッジが和らぎ、川の表情が大きく変わる。
▲天端コンクリートを少し下げた例
- 水抜きパイプ、小口止め等
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水抜きパイプを設置する場合、極力目立たないように工夫する。
解 説
・パイプの設置位置をブロックの目地や角に合わせる、ブロックに隠れる位置に設置する、ブロック法面からパイプが飛び出さないように控えるといった配慮を行う。
▲水抜きパイプを目立たなくした例
ブロックからパイプが飛び出さないように控えて、周りのコンクリートが目立たないように工夫している。
▲通常の水抜きパイプの例
ブロックからパイプが飛び出しており、周りのコンクリートも目立っている。
- 植生基盤となる空隙
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水際及び背後地の自然環境が良好な場合、生物の生息・生育場所や植生基盤となりうる空隙を持たせる。
解 説
・護岸法面に空隙を設ける場合には、素材の目地空間や素材そのものが有する微細な空隙を活用し、土壌の確保と植物の生育を促す。
▲濃い灰色部分が空隙部分
▲空隙部に草が繁茂している状況
- 湿潤状態を確保するための透水性・保水性
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水際及び背後地の自然環境が良好な場合、生物の生息・生育に適した湿潤状態の法面を確保するために透水性・保水性を持たせる。
解 説
・自然の河岸では、地下に浸透した雨水が表面に滲出することにより、保水性の高い土壌や河岸に生育する植物と相まって湿った状況が作り出されている。
▲全体に苔等が繁茂している状況(ポーラスアニーヴン)
▲部分的に苔等が繁茂している状況(ポーラスアニーヴン)
- 生物の移動経路を確保
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生物の移動経路に配慮するために法面に適度な粗度を持たせる。
解 説
・法面に細礫と同様の粗度を持たせた場合には、法面勾配が比較的急(5分程度)でも短い距離であれば生物の登攀が可能となる。